こんにちは、コレクティブ研究家の久保有美です。
先月(2021年1月)から始まった、コレクティブハウスのコラムについて、「面白い!」、「こんな住まい方があったなんて知らなかった!」というお声をいただきました。この連載がコレクティブハウスについて知っていただける機会になっていることが実感できて、嬉しかったです。
さて、コレクティブハウスの暮らしの中で、「興味がある」という声をいただくものの筆頭が、コモンミールについてです。
コモンミールとは「晩ごはん(夕食)作りの協同化」のこと。
私が暮らしているコレクティブハウスでは大人が交代で注文した人たちの夕食を用意しています。コモンミールづくりの当番は毎月1回回ってきます。
今月(2021年2月)は5日が私の当番の日で、夕食を23人分作りました。
大人20人分、子ども6人分です(子どもは大人の0.5人分と計算しているので23人分となります)。
23人分なんて言うと、「そんな大人数分を作った事なんてない!」とすごく驚かれることが多いです。
しかも1人で作ることが多いと付け加えると、ますます驚かれてしまいます。
ご家庭で家族の食事をつくるとき、普通は多くて6人分ぐらいでしょうか。核家族化が進んでいるので、3人分作るぐらいがほとんどかもしれませんね。
私は単身者ですので、コモンミールがない日は一人分しかご飯を作りません。しかし一人分のご飯を作るほうが実はかなり辛いのです。
家族分のご飯を作っていたのに、子どもたちが独立をして夫婦二人分しか作らなくなってしまった方や、離別などで一人になられた方にそう言うと、深く頷いてくださる方が多いです。
私の一人分のご飯をつくることの辛いPOINTを列挙してみました。
◯一人分の料理レシピは多くない。
◯レシピ通りにやろうと思っても材料は一人分で売っていないから至難の業。
◯カレーを作ったら、3食ともカレーになってしまうので、いつまでたってもなくならない。
◯同じような材料で思い浮かぶレシピには限界がある。
いろいろありすぎて全部は書き切れませんが、だいたいこんな感じです。
多く作ってしまったときに、「ちょっと作りすぎたから食べない?」と声をかけられる人が近くにいればいいのですけどね。
コレクティブハウスのコモンミールは、一人分の食事をつくる辛いPOINTをクリアしてくれるので、私にはとてもありがたい仕組みです。
そんな思いも含めて、今回はミールを作る手順を簡単にご紹介したいと思います。
※注:この手順や内容は、私が住んでいるコレクティブハウスの現時点の仕組みや考え方です。今後変わっていくこともありますし、こうでなければならないということではないことをご承知おきください。
1)決める
私の住むコレクティブハウスでは、いつ、誰が当番に入っているか、そして誰がご飯を頼んでいるのかを確認し管理するカレンダーを作っています。開催曜日や回数などは特に決めておらず、多い週もあれば少ない週もあります。
今月(2021年2月)のカレンダーには「久保は5日にミールを作りますよー」、と名前を書き込みました。
メニュー欄にその日作る予定のものを書き込みます。
私「くぼ牛」と書きました(“吉牛”と同じ感じで読んでください)。
毎月たいがい牛丼を作るので、メニュー欄にはもう「牛丼」と書かないのです。
子どもたちも久保がミール当番の日は牛丼とわかるほど、すっかり定番化しました。
注文の締め切りは当番の人によって違います。
材料の買い出しを前日までに済ませたい人は前日の朝が締め切り。私は当日に買い物へ行くので、当日の昼が締め切りでも大丈夫です。締め切りは各自がルールを決めていて、みんなはそれをきちんと守ります。
食べる人数が決まって、メニューが決まったら、次は買い出しです!
2)買う
買い出しは近くのスーパーに、大きめのリュックか、コレクティブハウスのショッピングカートを持っていきます。23人分ですからスーパーの買い物カートは山盛りです。
一食(一人)あたりの食材代は予算を決めてあるので、人数分から総予算を計算します。
今回は7,000円程度で23人分の夕食を作ります。予算を超えていないか、売り場の端の方に寄って、スマホの電卓で計算します。
さてここで、くぼ牛のレシピを紹介いたしましょう。
[くぼ牛のレシピ/23人分]
・牛肉・・・・3キロ
・玉ねぎ・・・9玉
・しらたき・・2袋
・紅生姜・・・2袋
・しょうゆ・・480cc
・酒・・・・・400cc
・みりん・・・400cc
・水・・・・・1600cc
・砂糖・・・・適当
どの食材もかなりの量ですよね。
これは好きな料理家さんのレシピを元に、だいたい8倍して決めました。
23人分と言っても、一般家庭のレシピを何倍かするだけので、慣れればそんなに難しいことではないです。
メイン料理のほかに副菜などをつけるかどうかは、その日のスーパーの野菜などの値段を見て決めます。この日はくぼ牛のほか、副菜、味噌汁、デザートを用意しようと思っていたのですが、タイムセールでいい生鮭があったので、味噌汁を豪華にして、副菜はなくしました。
3)つくる
私のコモンミール作りの最大の難関は、デザートです。
デザートは用意しなくてもよいのですが、子どもたちも食べるし、何より自分も食後にデザートがあると嬉しいのでせっせと作ります。
とはいえ手間を考え、いつもゼリーにしていますが、何が難関かというと、食事の時間までにゼリーがちゃんと固まるかどうかがわからないことです。
作る作業自体は、ゼリー液を作って人数分に分けて冷蔵庫に入れるだけなので簡単なのですが、デザートづくりをするのはミール当番のときだけだから、経験値のなさが不安。
コモンミールはただ大量の食事をゆっくり作っているわけにはいかないので、間に合うかどうかが心配なこともあります。
その点、くぼ牛や味噌汁は時間が読めるので気楽です。
4)盛り付ける
盛り付けは料理によっては大変ですが、今回は副菜を作らなかったので楽ちん。
コモンミールは19時ごろをでき上がりの目処にしていて、その時間になると、注文している人たちがそれぞれバラバラにキッチンへ取りに来ます。
くぼ牛の盛り付けは、セルフ式。人によってご飯の量も違うので、途中でなくなってしまうという不安もありますが、だいたい何とかなります。
皆それぞれに、今日は何人頼んでいるのか、この後に何人分残しておけばいいのか、なくなっていたら困る人がいることをわかっているので、加減して盛り付けしていきます。
ちなみに副菜があるときはこんな感じにとりわけます。
5)食べる
取り分けたあとは、それぞれ「いただきます!」。
本当はここで皆一緒に食べるところなのですが、2020年、コロナウイルスの感染拡大防止として、3蜜の回避が求められ、それが難しくなってしまいました。
そもそもコモンミールの実施自体どうするか、私のコレクティブハウスでもいろいろと話し合いをしました。コモンミールは、一緒に食べるリスクだけでなく、一緒に作るリスクもあります。
そこで現在(2021年2月)は感染拡大防止を考えて、それぞれの部屋で食べることが多くなりました。
これが結構寂しい。誰かと食べるご飯はやっぱり楽しく美味しいのです。
一度オンラインミールも試してみました。コモンミールの時間にZOOMをつないでみたのですが、ZOOMは同時に話ができないこともあり、賛否両論でした。
また一緒に食事ができる日常が早く戻ってきてほしいです。
6)片付ける
食べ終わった後は、食器や鍋、道具などを洗って片付けます。
ガスコンロだけでなく床も汚れているため、毎回丁寧に掃除を行います。
当番でミールを作ってクタクタなので、片付けを手伝ってくれる人(※「片付けサブ」と呼んでます)を募集して、何人かで一緒に片付けることが多いです。業務用食洗機はすすぎを高温水でやってくれ、乾燥も早いので強力な助っ人です。
最後は、ゴミ出しをして終了です。
今回はコモンミール作りの流れを中心にコレクティブハウスの暮らしを少し見ていていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 作るのは大変そうでしたか?
私は一人分のご飯を作るより、断然コモンミールのほうが楽です。自分で作らなくていい日が多いのもありがたいです。
前述しましたが、新型コロナウイルス禍の中、皆で一緒に食事ができることのありがたさが染みました。ただ、コモンミールをどうするか、皆で話し合ったことは印象に残っていて、これがコレクティブハウスの良さだと実感しました。
コモンミールについては、別の機会を設けて、私たちが気をつけていることや、金額的なこと、コモンミールがあることで助かっていることなどをお伝えしたいと思っています。
どうぞ楽しみにしていてください。
文:久保有美