漆喰の魅力を知って欲しい!
皆様こんにちは! DIY賃貸推進プロジェクト、特派員の伊部尚子と申します。
賃貸住宅の管理会社に長年勤務しており、住まい手がDIYできる賃貸住宅を増やす取り組みをしています。
素敵なカフェやレストラン、雑貨店に入ると、漆喰の塗り壁をよく見ます。天然の素材で健康にも良さそう、そしてその風合いも素敵なので憧れていましたが、まさかDIYで塗れるとは思っていませんでした。そんな私がある漆喰メーカーさんに出会ったことで、自宅に一人で漆喰を塗り、毎日素敵な空間と優れた機能を感じることができています。
私は生まれつきアトピー体質なので、自分自身や家族のために、口に入るもの、肌に触れるもの、そして長い時間を過ごす住空間にはなるべく天然の素材のものを選びたいと考えています。同じような人はたくさんいると思いますが、漆喰はそういう人にぴったりの壁材なのです。
私たちの健康を守ってくれる本物の漆喰のパワーと、それがDIYで塗れることを皆さんに伝え、さらには賃貸住宅でどのように大家さんにOKをもらうかを考えたく、今回は前編・後編に分けて、本物の漆喰の良さについて熱く語りたいと思います。
漆喰一筋92年!トップメーカーさんとの出会い
私にDIYでの漆喰の塗り方を教えてくださったのは、創業92年の漆喰トップメーカー、日本プラスター株式会社の奥山浩司社長です。
使った漆喰はその名もズバリ「うま~くヌレール」!! 思わずニヤリと笑ってしまう商品名ですが、実はそこには深い意味がありました。
漆喰はもともと粉状で売られているもので、プロの職人さんは現場で水と練り混ぜて壁を塗ります。小学校の校庭でライン引きをしたことがある年代の人は思い出して欲しいのですが、粉はとても飛散しやすく、素人が大量に扱うのは容易ではありません。そんな作業現場を想像しただけで髪が白くなり(笑)、喉がゲホゲホしそうです・・・。
混ぜるのもとても大変です。ホットケーキ100人分作る!みたいな感じで大量に粉と水を混ぜることをイメージすると、ダマにならないようにうまく練り混ぜられる自信がありません。粉の漆喰はとても重く、プロが専用の撹拌機で練り混ぜるものです。また、塗りやすくするために水を多く入れたくなりますが、この水分が後のひび割れの原因になってしまいます。白セメントの粉を混ぜている商品もありますが、それだとせっかくの漆喰の良さがなくなってしまいます。
そして、本物の漆喰の持つ健康に良い効果の多くは強アルカリ性であることに由来するのですが、それが故に飛んだ粉が目に入ると危険なのです。DIYで粉の漆喰を使用しないほうが良い最大の理由はこれです。
もしうまく練り混ぜられたとしても、次の難関が待っています。粉の漆喰は塗る作業にも技術が必要で、熟練の職人さんが下塗り、中塗り、上塗りと何日もかけて塗り重ねないと、剥がれたりひび割れたりしない丈夫な壁はできません。さらに、現代日本の住宅の室内壁は、柱が壁の裏に隠れる構造で下地は平らな石膏プラスターボードがほとんどなので、昔と比べて構造的に、漆喰がひび割れしやすくなっています。
たくさんの困難を並べましたが、つまり何が言いたいかと言うと、本来の漆喰は素人には「上手く塗れない」のが当たり前の、業務用の塗り壁材だということなのです。
「本物の漆喰」を素人が塗れるようにしたことが画期的
しかし、漆喰をこよなく愛する奥山社長と日本プラスターの皆さんは「一般家庭でも気軽に本物の漆喰塗りを楽しめるようにして、その良さを多くの人に体感してもらいたい」と考えました。そこから9年の歳月をかけ、ありったけの技術力と生産力を注ぎ込んで開発したのが、その名も「うま~くヌレール」なのです!
私がこのコラム記事で「本物の漆喰」と連呼するのには理由がありまして、漆喰調の塗り壁材には漆喰でないものがたくさんあるからです。なぜかというと、「漆喰だとうまく塗れないから」というのが大きな理由です。先に説明したように、漆喰は塗るのも練るのも大変、素人が塗ったら剥がれやひび割れが出てしまいます。だったら手軽に漆喰風であればいいというニーズも当然あります。そういったさまざまなニーズに合わせて、塗りやすくするために漆喰に似せた漆喰風の塗料や、消石灰に白セメントを混ぜている漆喰もどきなど多種多様です。
漆喰調の塗り壁材商品が多数ある中で、日本プラスターさんは「本物の漆喰」にこだわりました。そして同時に、「一般の人がうまく塗れるようにする」「現代住宅の構造でも支障ない」ことにもこだわり抜きました。そのこだわりが9年の歳月をかけて結実し、ペースト状で誰でも簡単にうまく塗れ、しかも現代の住宅の壁でもひび割れしにくい本物の漆喰が誕生したのです。
9年といえば小学1年生が高校生になる年月です。本当に語り尽くせない苦労があったと思います。開発者の皆さんの熱い想いがギュッとこもった商品名は、親しみやすさを狙ったダジャレではなかったのです。奥山社長、ついつい笑ってしまい失礼しました!
多種多様な塗り壁材がある中、そもそも漆喰ってなあに?
漆喰は、その丈夫さや美しさから、日本では古くからお城や土蔵などの文化財に使用されてきました。歴史オンチの私でもわかる有名どころで言うと、兵庫県の姫路城や皇居の桜田門の白く輝く壁、あれが漆喰です。海外だと、テレビや雑誌でよく見かける地中海リゾートの白い町並みが漆喰なのだそうです。なるほどあれが漆喰なのね~とイメージが沸きますよね。
しかし、世の中にある多種多様な塗り壁材の違いをわかっている人は案外少ないのではないでしょうか。かく言う私も奥山社長に教えていただくまで、漆喰と珪藻土の見分けすらついていませんでした。私と同じようにわからない人もいらっしゃると思うので、ご説明したいと思います。
漆喰はその主原料が消石灰です。サンゴ礁が地殻変動で隆起してできた鉱山で採掘された石灰石(炭酸カルシウムでできている岩石)を、焼成炉で焼成すると生石灰となり、それに水を反応させると消石灰になります。消石灰の主成分は水酸化カルシウムCa(OH)2です。
日本には多くの石灰石鉱山があり、炭酸カルシウムの純度が高い石灰石が採れるのだそうです。日本が誇る高品質の壁材だったのですね。ちなみに「うま~くヌレール」の原材料の石灰石は、日本プラスターさんの所在地栃木県佐野市の山から採掘されているそうです。
私が漆喰と混同していた珪藻土は、藻の一種が化石化したものだそうです。多孔質で調湿性に優れています。漆喰と似た風合いで間違いやすいのですが、実は全く違うものなのですね。
また、特に外装の塗り壁材として知られるジョリパットは、アクリル樹脂が主成分なのでペンキの仲間です。耐久性に富み、テーマパークなどの色鮮やかな塗り壁に使われています。
手で簡単に塗れると話題のモルモルも水性シリコン系の塗料なので、こちらもペンキの一種です。日本ペイントさんの商品なので、そりゃそうか!という感じですね。
ほかにもたくさんの塗り壁材商品が販売されていますが、さまざまな違いがあることを私も今までよく知りませんでした。
清潔な暮らしを守ってくれる漆喰のパワー
漆喰にますます興味が出て奥山社長を質問攻めにしたところ、漆喰には私たちの健康や清潔な暮らしに役立つ数々の機能があることがわかりました。「うま~くヌレール」はこれらの機能が科学的に証明されているのだそうです。
すごくたくさんの機能がある中で、私が特にいいなと思ったものを順番に紹介していきます。
まず1つ目は、日々の生活でとても助かるカビを防ぐ力。漆喰の持つ強アルカリ性という性質がカビを寄せ付けません。防カビ剤など配合しなくても、漆喰そのものがカビを防いでくれるのです。ちなみに実はカビだけでなく菌にも強く、漆喰には大腸菌や黄色ブドウ球菌を増殖させない働きがあります。
2つ目は、調湿性の高さ。8畳のお部屋の壁に「うま~くヌレール」を塗った場合、500mlのペットボトル5本分の水分を吸ったり吐いたりして、お部屋の湿度を調節してくれます。私も自宅の北側にある洗面脱衣所に「うま~くヌレール」を塗ったら、お風呂上がりでも洗面台の鏡が曇らず、タオルも乾きやすくなりました。
JIS規格では1m²あたり24時間で、70g以上調湿する塗り壁しか調湿建材とみなさないのですが、「うま~くヌレール」は85ḡとその基準を大きくクリアしています。一般的に漆喰より珪藻土のほうが調湿効果が高いと言われていますので、「漆喰を使いたいけど調湿効果はどうなの?」と考える方にとって、こういうデータがあると安心できますよね。
この1つ目、2つ目の機能があることで、結露で悩んでいたり、湿気が多くてカビが心配なお部屋に特におすすめということがわかります。昔の人は漆喰がカビを寄せ付けず、湿気を調節することを知っていて、大切な物を保管する蔵などに使っていたのでしょうね。
3つ目は、シックハウスを予防する力です。漆喰にはシックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドを吸着し、再放出しない性質があります。ホルムアルデヒドは家具などからも空気中に放出されることがあり、低濃度でも人体に悪影響を及ぼします。私たちは日々多くのものに囲まれて過ごしており、目に見えない化学物質は気をつけようがありません。そんな中、多くの時間を過ごす自宅で、漆喰の壁が化学物質の驚異から自分や家族を守ってくれるのはとてもありがたいと思います。私はアレルギー体質なので、個人的にはこの機能が一番気に入りました。
4つめは消臭力の高さ。これは私も自分で体験済みです。余った「うま~くヌレール」で靴箱のニオイ消しを手作りしたのですが、入れたことも忘れて翌朝靴箱を開けたとき、独特の臭いが全くせず爽やかな空間(笑)になっていてビックリしました。まさかこんなに効果があるとは!
奥山社長にお聞きしたら、同じ体験をして感動し、日本プラスターさんに入社した社員さんまでいらっしゃるそうです。その気持ち、わかる~!
5つ目は、汚れにくい性質。塗り壁は左官仕上げで壁に表情を付けられるのが良いところですが、凹凸があると埃などの汚れが付着しやすくなります。しかし漆喰はその点も安心です。漆喰壁が静電気を溜め込まない性質なので、埃や汚れなどが付きにくいのだそうです。昔から城壁などに使われてきたのは、丈夫なだけでなくきれいさを保つ力があることも大きいのですね。
6つ目は、漆喰「うま~くヌレール」の壁の固さ。ボロボロ崩れたり服に付いたりしないのです。塗り壁は濃い色の服が擦れると粉が付くことがありますが、「うま~くヌレール」の壁はそれがありません。猫も爪とぎできないほどの固さになるそうで、これには塗り壁材の「ボロボロしそう」なイメージを大きく覆されました。試しに私も思い切って、自分でうま~くヌレールを塗った壁を爪でガリガリと引っ掻いてみましたが、カチカチに固くて自分の爪のほうが負けそうなのでやめました(笑)。ちなみに私の爪はDIYのために常に短く、壁紙ならばかんたんに破けます。
私はこれまで猫と暮らす賃貸住宅を複数企画しており、壁には強化クロスを使用していました。実際に壁が固いと猫はそこでは爪とぎをしなくなり、別のもっと爪とぎし甲斐のある場所でするようになります。ペットのニオイ対策も同時にできて一石二鳥なので、次に猫賃貸を企画するときには漆喰の壁に挑戦したいと思いました。
そのほかにも、光を反射するのでお部屋が明るくなったり、燃えないので万一のときに安心だったりと、暮らしに嬉しい機能が盛りだくさんなのですが、本物の漆喰の持つ良いところを最大限に引き出しつつ、同時に塗りやすさやひび割れしにくさを実現したことに、「うま~くヌレール」のすごさがあるのだとよくわかりました。漆喰のパワーについてもっと詳しく知りたくなった方は、日本プラスターさんのホームページを見てみてくださいね。
奥山社長や日本プラスターの社員さんたちと一緒に漆喰塗り体験をさせていただき、その後も漆喰についていろいろなことを教えていただきましたが、皆さんに共通して感じたのは「自社製品の漆喰を心から愛している」ということです。社長さんは別としても、会社員として働いていて、自社の商品やサービスに自信を持って心から人に薦められるという方はどのくらいいるでしょうか。お話を聞けば聞くほど、漆喰愛に溢れた真面目な人たちが一生懸命作っている商品だということがわかり、ますます「うま~くヌレール」のファンになりました。
さて、前編では本物の漆喰のすごいパワーに焦点を当ててきましたが、後編では実際の塗り方について詳しくお伝えしたいと思います。賃貸住宅で大家さんや管理会社に漆喰塗りをOKしてもらうコツにも迫っていきますので、乞うご期待!!
文:伊部尚子