《 菓子工房賃貸推進プロジェクト 》Vol.031

「菓子工房兼住居」にリノベーションされた部屋~何度も菓子工房の見学会に参加し、ようやく手に入れた廣川純子さんの菓子工房

投稿日:2025年9月15日 更新日:

ハウスメイトが自社管理物件を菓子工房兼住居にリノベーション

「菓子工房賃貸推進プロジェクト」を開始するきっかけとなった「DIY賃貸推進プロジェクト」Vol.011のトップ画像

「ワクワク賃貸」で「菓子工房賃貸推進プロジェクト」を開始したきっかけとなったのは、「DIY賃貸推進プロジェクト」VOL.011(賃貸住宅で菓子製造業許可! DIYで住まい+αの夢を実現)という記事でした。
これは「ワクワク賃貸物件集」Vol.023(夏水組へのDIYデザイン相談とDIYプロ集団の施工サポート付き! DIYで理想の部屋をつくりたいあなたを応援する賃貸マンション)を借りた入居者さんがDIYで菓子工房をつくったという記事でしたが、それを読まれて「私も菓子工房を探しているので共感しました」というメールを多数頂戴し、菓子工房を求めている方がとても多いこと、それに反して菓子工房とできる賃貸物件がとても少ないことを知り、「菓子工房賃貸推進プロジェクト」を始めようと考えました。
その記事を書いてくださったハウスメイトマネジメントの伊部尚子さんから、「同じマンション内に菓子工房兼住居をつくってみたいので、協力してほしい」と要請され、つくりあげたお部屋が今回ご紹介する物件です。
まずはハウスメイトさんがリノベーションした菓子工房兼住居をご覧いただきましょう。

前の入居者さんがパンの製造をするために、LDKのキッチンを改修していた

こちらの物件は、前の入居者さんがパンの製造販売をするためにLDKのキッチンを改修していました(キッチンをWシンクにしておられました)。
それを住居兼用にリノベーションしたいというのが今回の依頼内容です。

菓子工房兼住居にリノベーションされた部屋の間取図

トイレは、菓子工房だったLDKからセパレートされているので、このままでよし。
あとは洋室にミニキッチンをつければ住居兼用とすることができます(住居兼用の場合、菓子工房とは別に生活用のキッチンをつける必要があるためです)。
そこで、LDKと接していない北側のお部屋にミニキッチンを設置するプランをハウスメイトさんに提示しました。
ところが協議を重ねているうちに、こちらもWシンクにして、LDKと洋室のどちらを菓子工房にしてもいいようにしたほうが、お客様の層を増やすことにつながるだろうことに気づきました。
その企画案をオーナーさんが採用してくださったので、施工する前にニーズを確かめるべく、現地説明会を開催することにしました。
「菓子工房」の空き待ち登録者さんたちに現地説明会を開くことをお伝えし、ある程度の参加希望者がいれば、この企画を進めようという話になったのです。
その結果、現地説明会には2名の方が参加され、そのうちのおひとり、廣川純子さんが入居申込みをしてくださったので、オーナーさんは住居兼菓子工房とするリノベーションプランを正式にご採用くださいました。

キッチンを設置した北側のお部屋

こちらが完成した「菓子工房にもできる洋室」です。

洋室に設置したWシンクのキッチンと作業台

キッチンの給排水管は、背面にあるパウダールームの給排水管から引き込みました。
ガス工事は大掛かりになるので、IHクッキングヒーターを利用していただくことにし、背面壁に白のキッチンパネルを貼りました。

窓枠にはめ込んでつくった換気扇

外壁に穴を開けることはマンションの構造上難しかったので、換気扇の設置には頭を悩ませましたが、ハウスメイトの工事担当者さんが窓枠にはめ込んでつくれる商品があることを教えてくださり、そちらを設置。
こうして洋室の菓子工房化工事が完了しました。

完成した廣川さんの菓子工房

リノベーション工事が完了してすぐに、ハウスメイトさんは廣川さんと賃貸借契約を締結。
廣川さんは、洋室のほうをご自身の菓子工房とすることとし、冷蔵庫やコールドテーブル等を入れ、追加で必要となったコンセント工事を自費で行いました。
しばらくして「保健所の営業許可をいただけました!」というご報告を頂戴し、完成した姿を拝見しに伺いました。
あわせて廣川さんに、自前の菓子工房を持つまでの苦労談などを伺ってきましたので、ご紹介します。

自前の菓子工房を持つに至るまで

廣川純子さん

⎯⎯⎯⎯ 「菓子工房兼住居」のご契約、おめでとうございます!
こちらの物件はLDKと北側洋室のどちらも菓子工房とすることができましたが、廣川さんは洋室のほうをお選びになりました。その理由から聞かせていただけますか?

廣川さん:現地説明会のときは洋室にキッチンがない状態でイメージがつかなかったので、漠然とLDKのほうを菓子工房にするんだろうなと思っていました。でも完成した洋室のキッチンを見たら、とても立派なものだったからびっくり! 「LDKのほうを菓子工房にした場合、隣接する部屋は菓子製造に従事しない人は利用できません」と保健所の方に言われたこともあり、洋室を菓子工房にすることにしました。

菓子工房の製造許可もとれるLDK

⎯⎯⎯⎯ LDKに隣接する部屋は、LDKを通らないと玄関やトイレ、浴室などに行けず、菓子工房には原則菓子製造従事者しか出入りできないから、LDKを菓子工房とするのは難しいということですね。

廣川さん:ひとりで暮らしている分には問題ないけれど、誰かと同居することになったら、対策を講じる必要が出てきます。洋室の菓子工房は広さも自分に合っていたので、そちらで保健所の許可をいただくことにしました。

⎯⎯⎯⎯ LDKは生活の場としてだけお使いになりますか?

廣川さん:普段はそうですが、先々お菓子教室を開くことも考えていて、その場合はLDKを教室にすると思います。

⎯⎯⎯⎯ 洋室のほうは、生徒さんを入れると少々窮屈そうですものね。

廣川さん:それに私は、できれば自分の菓子工房に人を入れたくないので、そのへんの区分けはしっかりしたいと思っています。

お菓子をつくっている廣川さん

⎯⎯⎯⎯ お話が前後しますが、廣川さんはなぜ自前の菓子工房が必要だったのでしょう?

廣川さん:私は今、歯科医院に歯科衛生士として勤務していますが、定年後も何かしら仕事を続けたいと思っていて、それには菓子製造販売が一番いいと考えました。今のうちからそのための準備を進めておきたく、自分は形から入るタイプなので(笑)、まずは自前の菓子工房を持とうと思いました。

⎯⎯⎯⎯ それであれば、ご自宅近くにシェアキッチンを借りる方法もあったかと思いますが、なぜ住居兼用がよかったのですか?

廣川さん:今は歯科衛生士の仕事と両立させる必要があり、お菓子をつくれる時間や曜日には限りがあります。住居兼用ならば、いつでも自分のペースでお菓子づくりができるので、私にとってはそれがベストの選択肢でした。

菓子工房の収納スペース

⎯⎯⎯⎯ シェアキッチンだと自分のペースではできないですものね。

廣川さん:これまでシェアキッチンにもお世話になってきましたが、事前予約をしなければならないから、予約できた日に自分の気分やスケジュールを合わせていました。今は、気分が乗ったとき、いつでもお菓子づくりができるのでありがたいです。

⎯⎯⎯⎯ 「ワクワク賃貸」では「アトリエ賃貸推進プロジェクト」という連載もしていて、アトリエを探している美術作家さんに「アトリエは住居兼用と独立型のどちらがいいか?」とアンケートをとったことがあります。独立型のほうがプライベートと制作活動を切り分けられるのでいいという方と、住居兼用のほうが何かひらめいたときすぐ制作できるからいいという方と、明確に分かれていたことが印象的でした。

廣川さん:とても共感できます。そのアンケートでいったら私は後者ですね(笑)。それと私は心配性なので、シェアキッチンだと忘れ物はなかったか、ガス栓はきちんと閉めたかなど、いったん気になったら止まりません。心配の種は少なければ少ないほど楽ですから、その点でも私には住居兼用が向いているのだと思います。

廣川さんが2度見学に訪れた田浦月見台のプロジェクト現場

⎯⎯⎯⎯ ところで廣川さんは、いろいろな菓子工房の現地説明会などに積極的に参加くださっていたので、私ともこれまで何度もお会いしてきましたね~。

廣川さん:「菓子工房賃貸推進プロジェクト」で紹介された「弥生荘」「錦糸町プロジェクト」のほか、「小商い賃貸推進プロジェクト」で紹介された「ミカワヤビル」も検討させてもらいました。そうそう、田浦月見台には2回見学に行きましたよ。ほかにも東京R不動産の物件などいくつも内見してきました。

⎯⎯⎯⎯ 田浦月見台に2度も行かれたのですか? 遠いのにそれはスゴイ! 本当にたくさんの物件を見て歩かれたと思いますが、数多く見てきてよかったことは何でしょう?

廣川さん:私はいつでも申し込む気満々で現地説明会に行っていました。実際、何度も申込みをし、なかなかうまくいかなかったのですが、その都度、私はどうやってこの物件を使うか、自分の暮らしにあっているかなど真剣に考えました。そうしているうちに、自分が求めている菓子工房がどんなものなのか、わかるようになってきた気がします。

お菓子製造中の廣川さん

⎯⎯⎯⎯ たくさんの菓子工房を見ているうちに、廣川さんにとって必要な要素とそうでない要素が整理され、具体的になってきたということですね。

廣川さん:そうした積み重ねがあったから、今回はすぐに決断できたのだと思います。

⎯⎯⎯⎯ 菓子工房賃貸推進プロジェクト」でも、現地説明会は参加費なしで開催しているので、空き待ち登録してくださっている方々には是非まめに足を運んでいただきたいです。苦労の末、手に入れた今回の菓子工房兼住居に点数をつけるとしたら何点ぐらいですか?

廣川さん:80点・・・いや、90点ぐらいかなあ? 通勤時間が以前はドアtoドアで40分くらいだったのですが今は60分くらいで少し長くなりました。ああ、でも利用している電車は隣りが始発駅なので、朝の早い時間は座って通勤できるし、帰りも寝て帰れるから楽だとわかったから、それはあまり苦ではなくなりました。

⎯⎯⎯⎯ 住居兼用だから、通勤も含めて生活環境がガラッと変わったというわけですね

廣川さん:近くに好みのカフェも見つけることができ、5月に引っ越してきたばかりだというのに、すっかりこの町に馴染んでいます。

⎯⎯⎯⎯ コンセプト性の高い物件の場合、供給される数がとても少ないので、立地は少し目をつぶったほうが理想の暮らしを手に入れやすいです。廣川さんはそれを実践してくださったわけで、その点でもとても嬉しいです。

できあがった焼き菓子

⎯⎯⎯⎯ 最後に、自前の菓子工房を手に入れて、今後の事業計画はどのように考えているか、お聞かせください。

廣川さん:実は、いくつ売るとか、どうやって売るとか、まだあまり決めていないんです。先のことは考えすぎない性質なので(笑)。自分のペースで、ゆっくり考えていこうと思っています。

⎯⎯⎯⎯ ここは菓子工房であると同時に暮らしの場でもあるから、ちょっと贅沢な住居を借りたと思えば、焦る必要はないですよね。廣川さんのこれからの生活がワクワク感にあふれたものとなるよう願っています。本日はありがとうございました。

廣川純子さんの菓子工房

文:久保田大介

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久保田 大介

『ワクワク賃貸®』編集長。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月より本ウェブマガジンの発行を開始。 夢はオーナーさん、入居者さん、管理会社のスタッフさんたちがしあわせな気持ちで関わっていけるコンセプト賃貸を日本中にたくさん誕生させていくこと。

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