《 ワクワク賃貸研究所 》Vol.011

賃貸マンションにおける屋上活用に関する検証

投稿日:2018年11月29日 更新日:

「ワクワク賃貸®妄想中」で問題提起されたテーマ
「屋上はどこまで利用できるか?」を検証したい

きなこ助手
さてさて、本日のテーマは賃貸物件の屋上で怪獣ショーをやってもいいのかどうかというテーマですわね

森下所長
怪獣ショーが焦点だったっけ!?

きなこ助手
観覧車でもいいですわよ! 名古屋には観覧車付きのビルがあると聞きますわ。

森下所長
あれは屋上じゃなかったような気がするけど・・・。 それはともかく、賃貸マンションなどの屋上をどこまで利用できるかっていうのは興味深いテーマだね。 たまに、屋上がフリースペースのように開放されているマンションもあるけど、設備なんかは全く置いてないか、あっても共用の物干し竿が置いてあるぐらいのものだからね。

きなこ助手
うーん、妄想中のイメージイラストではキッチンカウンターなんかもついてますけど、こんな風に利用できるのかしら・・・。

森下所長
そこで今回は、屋上の有効活用を事業として商品化している東邦レオ株式会社さんに取材させていただくよ!

きなこ助手
まあ! 前回に引き続いての取材記事ですわね! 前回は浅草でしたけど今回はどこかしら?

森下所長
えーと、この住所は・・・JR山手線「大塚」駅だね。

きなこ助手
めっちゃ近所でしたわ! むしろ森下所長の古巣じゃありませんの!

森下所長
古巣と言うかなんというか、大塚には永幸不動産の管理物件もいくつもあるから、今でも普段の行動範囲内だなぁ。

きなこ助手
れっつごーですわ!

 

東邦レオさん屋上にて

きなこ助手
まあ! これが「1965年の創業以来、50年以上にわたり、社名の由来にもなっている『生活環境の向上へ貢献すること(Living Environment Organizer)』を実践」されていらっしゃる、東邦レオさんのオフィスですわね!

森下所長
またホームページから引用しとる! あとここはオフィスじゃなくってショールーム・・・ルームでもないな、ショー屋上だね。

池田さん
ようこそ東邦レオへ! グリーンテクノロジー事業担当の池田菜王子と申します。

森下所長
こんにちは! 屋上をどれぐらい有効活用出来るのかを調べておりまして、今日はよろしくお願いします。

きなこ助手
そもそも、このショー屋上にもバーカウンターとかベンチとかテーブルセットまでありますわ!

森下所長
これらは設置しても問題がないということなんですよね?

池田さん
その通りです。屋上の有効活用で守らなければいけないものとして、建築基準法と消防法があります。建築基準法で特に注意が必要なのはフェンス・手すりに関する規定ですね。

きなこ助手
フェンスと言うと・・・ここのショー屋上にも落下防止用の手すりがありますけど、これのことですの? でも、ここから周りを見渡すと屋上に手すりがついていないビルやマンションもありますわね。

池田さん
そうなんです。こういう手すり・フェンスの設置は、基本的には人が入るかどうかで判断されるんですが、人が入れることを前提としている場合は安全上必要な高さが1.1m以上の手摺壁や柵を設けなければいけないという規定があり、この高さ1.1mの確保が重要なんです。

森下所長
なるほど、そもそも人が入れる屋上と入れない屋上とがあるんですね!

池田さん
そうです。これは屋上部分の床面の耐荷重によって判断されます。弊社には屋上を有効活用したいというご相談が多く来るのですが、そもそも人を立ち入らせていい屋上かどうかを先に確認しなければいけないんです。

きなこ助手
それはどうやって確認できますの?

池田さん
建物が完成したときの図面である「竣工図」を確認させていただいています。竣工図を確認すれば、屋上の耐荷重がどの程度あるかが判断できるんです。

森下所長
なるほど! そういえば管理しているマンションの屋上に携帯電話基地局を設置したいという相談を受けたことがあって、その時も竣工図を確認したいと言われたなぁ。

きなこ助手
ということは、調査の結果屋上の耐荷重が不足していた場合は・・・?

池田さん
残念ですが、屋上の利用ができないというケースはあります。

きなこ助手
ががーん! ですわね。

森下所長
まあ、耐荷重を無視して屋上を使って崩落したなんてことになったら大変だからね・・・。

きなこ助手
ほかに気をつけるべきポイントはありますの?

池田さん
そうですね、例えば弊社の「Solamie(ソラミエ)」という商品には色々なアイテムがあるのですが、その中に「ロールスクリーンパーゴラ」というものがあります。ちょうどこの屋上にも設置されてます。

Solamie(ソラミエ)イメージパース1

Solamie(ソラミエ)イメージパース2・右奥のスペースがロールスクリーンパーゴラ


きなこ助手
ふむ? 屋根のない小屋のようですわね。それに、ロールスクリーンじゃなくって板にしてしまったほうが雨が降っても安心なのでは?

池田さん
実は、それがダメなんです。

森下所長
ええっ、そうなんですか?

池田さん
はい。屋上にこうしたものを設置するとき、きちんとした屋根がある構造物だと増築とみなされてしまうことがあるんです。そうすると建築基準法のうち容積率の問題で活用が難しくなってしまうケースがあります。

きなこ助手
そうなんですね。それはどこでも共通なんですか?

池田さん
所によって若干のばらつきはありますね。でも、どこでも対応できるようにこのロールスクリーンパーゴラは出し入れ可能な構造で、ロールスクリーンにも雨を通すような素材を使っています。

森下所長
雨が降ってきたら屋内に退避ですわね!

 

安全に楽しめる屋上活用

きなこ助手
屋上の活用だからこその注意事項もありますの?

池田さん
そうですね、風による飛散防止のために各アイテムはきちんと固定する必要があります。さらに、先ほどのの手すりの話とも関連するんですが、たとえばお子様の出入りがあるような場合はアイテムのうち椅子やテーブルも簡単に移動できないようにワイヤーで固定します。そうしないと、椅子を移動させて手すりを超えてしまうことだってありますからね。

きなこ助手
危ないですわね!

森下所長
そういえば、ここのショー屋上でもパーティーが開けるようになっているんですよね。その時の注意事項はなにかありますか?

池田さん
そうですね、たとえば、屋外用のバーカウンターには流しがついてます。給水に関しては建物の設備を引いていますが、排水は屋上の排水口に流すようになっています。そのため、油汚れをそのまま洗って流してしまうと詰まりの原因になるので、この水道の用途は手をちょっと洗ったり、コップをすすいだりするぐらいにとどめてもらっています。

森下所長
そうか、ここはもともと普通の屋上だったのを改装しているんですね。

池田さん
そうなんです。ですから新築の建物で最初から屋上に上下水道を引き込めば、もう少し使い道の自由度はアップすると思います。

きなこ助手
このショー屋上、照明用の電気も引き込まれてますし、調理もできるようになっていますのね!

池田さん
調理は、バーベキュー台やカセットコンロなどを想定しています。

森下所長
こういう屋上空間を作るとき、やはり近隣の方には説明したりするんですか?

池田さん
利用方法によるのですが、たとえばバーベキューパーティーなどを行うスペースの場合、どの程度の利用頻度で、どのように使うのかを近隣にお住まいの方に説明して回っています。どうしても近隣の方のご了承が得られなときは、残念ながら断念することもあります。

きなこ助手
大変なお仕事ですのね・・・。

森下所長
たしかにバーベキューパーティーとなると、無断で利用開始してしまってから苦情になっちゃうと本当に大変だからね・・・。

池田さん
もちろん用途によるので、たとえばオフィスなどのプライベート空間として利用する場合はあえて確認しないこともあります。

きなこ助手
いまPM工房社の企画物件で屋上活用を検討していますが、そちらでも、是非お力添えくださいですわ!

池田さん
こちらこそ、よろしくお願いいたします!

 

まとめ

きなこ助手
さて、今回の妄想実現度は・・・

森下所長
というか、今回は注意点の研究だからそもそも実現度は100%だったね。

きなこ助手
ああっ、きなこの出番がまた奪われましたわ!

森下所長
今日の取材結果をまとめると、こんな感じかな。 ①人の出入りが可能かどうか、確認が必要 ②人の出入りが可能な場合は手すりの設置が必要 ③屋根付きスペースを設置したい場合は増築にあたらないか注意 ④近隣の理解を得ること

きなこ助手
でも、水も電気もガスも使えますし、思ったよりも活用の幅は広いような気がしましたわね。

森下所長
そうだね。この4点の中ではやっぱり近隣の方との良好な関係づくりが一番のポイントになりそうだ。

きなこ助手
よーし、それじゃあ全身が電光ピカピカでライトアップされ、右手からはプロパンガスファイヤーを左手からは圧縮水流ビームを放つ怪獣「ギナ゛ゴ」ショーの屋上開催について近隣の方のご理解を求めますわ!

森下所長
理解されるかッッ!!

 

研究協力

東邦レオ株式会社
東邦レオはデザインと環境技術を掛け合わせて、グリーンインフラに代表される社会基盤をつくり、街の不動産価値アップや人々のライフスタイルをつくる企業。商業施設やオフィス、マンションの屋上や外構などの共用スペースを活用し、継続的なコミュニティを生み出す場づくりや維持管理、イベント企画に至るまでトータルプロデュースを行っている。
URL https://www.toho-leo.co.jp/

執筆:森下智樹
企画・監修:久保田大介

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森下 智樹

永幸不動産株式会社・代表取締役 賃貸管理・仲介と売買仲介をメインに、一都三県を股に掛けて活動する不動産会社の代表。 会社は免許番号(10)とそれなりに古いが、既成概念にとらわれずになんでもやってみる姿勢を大切にしている。 その仕事は月極駐車場の草むしり&除草剤散布から都心の土地売買まで多岐にわたる。 2018年より宅地建物取引士資格制度における登録実務講習講師としてデビュー。

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