《 菓子工房賃貸推進プロジェクト 》Vol.032

フードスタイリストのオーナーさんが新築された菓子工房兼キッチンスタジオ兼住居「四室」が完成!(in 東京都渋谷区千駄ヶ谷)

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賃貸併用住宅の賃貸部分を3つの菓子工房に

完成した「四室」の外観

昨年(2025年)3月、「菓子工房賃貸推進プロジェクト」で「千駄ヶ谷・北参道エリアに3室の菓子工房を新築中!~フードスタイリストのオーナーが発案した、店頭販売やルーフテラスでの飲食も可能なミニ・菓子工房ヴィレッジ」という記事を配信しました。
これは笹木芳夫さん(美術作家)・ダンノマリコさん(フードスタイリスト)ご夫妻が建てられる賃貸併用住宅の賃貸部分に3つの菓子工房をつくるという計画をご紹介する記事で、私は企画段階からコンサルティングをさせていただきました。
1階をご夫妻の自宅、2階を菓子工房、屋上を笹木さんが企画する美術展の展示スペースとし、ご自宅部分にはダンノさんのキッチンスタジオを設けるというプランです。
ご夫妻が「四室(よんしつ)」とネーミングした建物が昨年(2025年)10月に完成し、本年(2026年)1月に建物のお披露目となる合同マルシェが開催されたので、取材をしてまいりました。
ダンノさんに今回の建物を建てた経緯や今後の展開についてもお話を伺いましたので、あわせてご紹介します。

「四室」の全体像

「四室」の入り口

「四室」という名称はダンノさんのキッチンスタジオと3つの菓子工房、あわせて4つの飲食スペースがあることから命名されました。
建物の外観は普通の一戸建てに見えるので、入り口扉が閉まっていたら、この中が菓子工房ヴィレッジになっているとは、なかなか想像できないでしょう。

入り口扉を入ると小さな中庭と階段が見える。奥はダンノさんのキッチンスタジオ

日中はオープンされている「四室」の入り口扉から中をのぞくと、小さな中庭と階段が見えます。
中庭の奥にあるのがダンノさんのキッチンスタジオです。
はじめにこのキッチンスタジオからご紹介しましょう。

ダンノマリコさんのキッチンスタジオ

1階は笹木さん・ダンノさんご夫妻の自宅ですが、ご自宅の半分をキッチンスタジオとされました。
キッチンスタジオとお住いはロフトを多用しているので、ロフトのない部分の天井がとても高いことが印象的です。

オーナーのダンノマリコさん

キッチンスタジオを運営するダンノさんは出版やWEBに関わる料理の仕事をされています。
「四室」を建てる前の家でも、ダンノさんは日本各地の港に出向き、自ら仕入れてきた新鮮なお魚を使い、定期的に会員制の食事会をされていましたが、新たにつくったキッチンスタジオはダンノさんの仕事場となるほか、ポップアップレストランとして活用する頻度を高めていく予定です。

ロフトからキッチンスタジオ全体を見渡すとこんな感じ

ダンノさんには、このスペースを親しい方にレンタルする考えもあって、2階の菓子工房に入居された金子麻衣さんがさっそく新作ケーキの発表会会場として利用されました。
この例のように、菓子工房の利用者さんたちがダンノさんのキッチンスタジオを上手に活用してくださったら嬉しいなと思っています。

2階の菓子工房ヴィレッジ

キッチンスタジオを出て中庭の階段を上がると、菓子工房ヴィレッジが姿を現します。
写真で見て左奥が01号室、手前が02号室、右奥が03号室です。
ウッドデッキが敷き詰められたテラススペースの上は吹き抜けになっているので、青空が見えてとてもさわやかな雰囲気です。
この3つの菓子工房を借主(店主)さんのコメントとともに簡単にご紹介いたしましょう。

01号室の金子麻衣さん

01号室はフランス菓子店「sobon(そぼん)」で店主は金子麻衣さん。
金子さんはフランスでお菓子作りの修業をしてこられ、帰国する直前に四室の企画を知り、念願のお店をオープンされました。

【店主(金子麻衣さん)コメント】

こんにちは、sobon(そぼん)です!
当店は毎週金、土、日曜日の13:00-19:00に営業しています。
「大切な人に贈りたくなるお菓子」をコンセプトに、フランスで修行した店主が材料選びからこだわったお菓子を提供しています。看板商品はフランスのカスタードタルト「フラン」です。理想の風味、食感を追求した当店独自のレシピでお作りしているこだわりの一品です。是非一度お試しいただけたら嬉しいです。

02号室の瀧田柊子さん

02号室は創作和菓子店「たきや」で店主は瀧田柊子さん。
瀧田さんも長く和菓子店で修業を続けてこられ、自分の城を築く夢を実現されました。

【店主(瀧田柊子さん)コメント】

できたてのどら焼きと季節の生菓子を販売する和菓子店「たきや」です。ナッツや乳製品を取り入れた創作和菓子が中心のため和菓子苦手な方にもお楽しみいただけます。日常のおやつや手土産にぜひどうぞ。
営業時間は12:00〜17:00の不定期営業です。販売日はInstagramにてご案内しております。

03号室の小野珠美さん

03号室はグルテンフリー専門菓子店「SHOWCASE.(ショーケース)」で店主は小野珠美さん。
お菓子をつくって販売するのは初めてということで、そのドキドキ感がこちらにも伝わってきます。

【店主(小野珠美さん)コメント】

グルテンフリー専門菓子店「SHOWCASE.」です。忙しい日常に寄り添う小さな幸せを届けるお菓子。小麦・白砂糖不使用、安心安全な素材で丁寧にお作りしお届けしています。グルテンフリーに興味はあるけどちょっと面倒…そう思っている方にこそ始めるきっかけになってもらえたら嬉しい。健康や美容に留意されている方へもそうでない方へもぜひ覗きにいらしてください。
営業日:基本毎週(金・土)11:00〜17:00(Instagramにて営業日お知らせ)

屋上から見た菓子工房ヴィレッジ

金子さん、瀧田さん、小野さんがどのように自前の菓子工房をつくったのか、そのお話は別の記事でご紹介できたらと思っていますが、お三方は「四室」の企画段階からこの話に乗ってくださり、約2年間一緒に菓子工房ヴィレッジをつくってきました。その勇気と情熱とエネルギーに、私は感動しっぱなしでした。是非新しい商売を成功させてほしいと願っています。

お菓子を買われた方は屋上でも食べることができます

もうひとつ階段を上がると、そこは屋上スペースになっていて、ここでは美術作家でいらっしゃる笹木さんが年5~6回企画展を開催される予定です。
企画展がないときは、2階でお菓子を買われたお客様がここで食べることもできます。
3つの菓子工房ではコーヒーやお茶、夏場はかき氷なども販売するので、このスペースを利用できるのはありがたいです。

2階の共同トイレ

トイレはキッチンスタジオ、菓子工房ともに室内には設けておらず、2階に共同利用できるトイレが設置されています。
トイレットペーパーや掃除用品等の補充はオーナーさんが請け負ってくださり、清掃は全員で分担します。
トイレを菓子工房内につくるとワークスペースがその分狭くなってしまうので、共同利用できるトイレの存在は貴重です。

「四室」のできるまで

オーナー側で設けたカウンターテーブルとイス

さて、ここからは「四室」のできるまでの話をご紹介します。
オーナーのダンノマリコさんにお話を伺ってきましたので、菓子工房のある賃貸物件に関心を持ってくださっている不動産オーナーさんも参考にしていただけたらと思います。

⎯⎯⎯⎯ 「四室」の完成、おめでとうございます。「四室」は企画段階から関わらせてもらったので、これまでの経緯は私もわかっていますが、その時々にダンノさんやご主人の笹木さんが何を思い、考えておられたのかまでは知りませんので、そのあたりに触れながらお話を聞かせてください。
まず今回の企画はダンノさんが「ワクワク賃貸」編集部にメールを送ってくださったところから始まったのですが、そもそもどうして「ワクワク賃貸」のことをお知りになったのですか?

ダンノマリコさん(以下「ダンノさん」)仕事仲間のHさんが、自前の菓子工房をずっと探していて、そんなニーズがあるんだなあと漠然と思っていました。古くなった自宅を建て替えるにあたって、賃貸併用住宅とすることにし、賃貸部分を何にするか考えました。住居にすると入居者さんとうまくやっていけるか不安だし、シェアキッチンにしたら自分の仕事をしながら運営することは難しいのは目に見えているし、そんなこんなを考えていたらHさんの話を思い出して、Hさんに相談したところ「ワクワク賃貸」さんを紹介してくれました。

⎯⎯⎯⎯ Hさんは「菓子工房」に空き待ち登録をしてくださっていて、これまで何度も現地説明会に参加してくれていますが、そんな橋渡しをしてくださるとは本当にありがたい限りです。

ダンノさん:意を決してメールを送ったら、久保田さんが旧宅にすぐ来てくださいました。

⎯⎯⎯⎯ 一昨年(2024年)5月のことでしたね。

ダンノさん:そのとき「空き待ち登録者さんたちに現地説明会のお誘いをして、希望者がいなければやめればいいし、いたら勇気を持って進めていけばいい」と言われました。私たち夫婦がつくりたい賃貸併用住宅の話もしましたね。ロフトを多用したいとか、2階に菓子工房やアートギャラリーをつくりたいとか、そんな話をしていたら、「そういうユニークな建物はハウスメーカーに頼むよりも建築家と一緒につくったほうがいいかも」と言って、ビーフンデザインの進藤強さんを紹介してくださいました。

設計と施工管理を請け負ってくれたビーフンデザインの進藤強代表

⎯⎯⎯⎯ ビーフンデザインさんはロフトを上手に使った建物をこれまで数多く手がけてこられているし、物件の近くにあるオフィスは小商い賃貸にもなっていて、このジャンルは滅法強いので、自信をもって推薦しました。

ダンノさん:ビーフンデザインさんの設計士さんたちや久保田さんにお越しいただいて、お酒を飲みながら最初の打合せをしたら、気づけば夜中になっていたということもありました(笑)。

⎯⎯⎯⎯ その節はご迷惑をおかけしました(笑)。進藤さんはプランをつくったあと、融資先もご紹介くださって、ダンノさんと一緒に銀行回りもしてくれましたね。

ダンノさん:私や主人が自営業なので、銀行が融資してくれるかということが、最大の不安だったので、とても心強かったです。

入居予定の小野さんも参加くださり、とり行われた地鎮祭

⎯⎯⎯⎯ 入居者さんの募集については、「菓子工房」に空き待ち登録をしてくださっている方たちに、この企画の説明会をご案内したら7名の方が参加くださり、そのうち6名の方が完成後の入居をご希望くださいました。

ダンノさん:予想していたより反響が多くて、驚きました。まだ企画の段階で、これから先どうなるかわからないのに入居を希望くださるなんて、不思議な感じでした。

⎯⎯⎯⎯ 当初、菓子工房をひとつと、笹木さんのギャラリーをひとつつくる予定でいらっしゃいましたが、「こんなに申込みがあるのなら」と菓子工房を3つつくる決断をしてくださいました。

ダンノさん:たくさんの方が応募してくださったことは嬉しく、本当なら全員分の工房をつくりたいくらいでした(笑)。結果的には、進藤さんに建築費と融資額とのバランスをアドバイスしてもらい、なるべく多くの方に使っていただけるよう、3室のプランになりました。

⎯⎯⎯⎯ そのあと入居希望者さんたちに、支払える家賃や資金計画などを伺って3人の方に絞らせていただきました。それから定期的に集まって、プランの打合せや共用トイレの使い方などをじっくり話し合ってきました。

ダンノさん:お申込みいただいてから完成まで1年以上もあったので、借りたい気持ちを持続してくださるか少し心配でしたが、皆さんと打合せをしているうちに、その不安もやわらいできました。

⎯⎯⎯⎯ 途中でおひとりの方が、働いているお店で「跡を継いでほしい」と頼まれ、こちらをキャンセルされましたが、「ワクワク賃貸」で欠員の募集をしたらすぐに決まったということもありましたね。そのときは不安はなかったですか?

ダンノさん:そのときは融資のことが不安だったり、設計の打合せもかなり忙しかったりして、それを気にしている余裕がありませんでした。久保田さんのいままでの経験と実績があったからこそ気にしないで済んだ、という部分が大きいです。

⎯⎯⎯⎯ 私的には、地鎮祭に入居希望くださっていた小野さんが参加してくれたというのが、とても嬉しく、面白かったです。建物を建てる前から入居者さんが決まっていて、地鎮祭に参加するなんて、なかなかあるものじゃありません。

ダンノさん:そうなんですね~。私は地鎮祭自体初めてのことだったので、それが珍しいことだという自覚がありませんでした(笑)。

B工事の図面

⎯⎯⎯⎯ お手伝いをしていて、個人的に一番大変だったのは、菓子工房をつくる過程でオーナーさんが工事代を負担して行うインフラ工事(=A工事)、工事代は入居者さんが支払うけれど施工はオーナーさんが行う工事(=B工事)、工事代負担も施工も入居者さん側となる工事(=C工事)があって、その区分けです。

ダンノさん:当初私のほうで負担するのは、扉や窓を含む外側(箱)部分と、天井・壁・床の下地設置、給排水管と電気の引き込み、給湯器設置、ライティングレール設置、最低限のスイッチとコンセントの設置、そんなあたりだと説明を受けていました。

⎯⎯⎯⎯ ところが、壁・床の下地を設置したあと、キッチン等を配置するのに給水管や排水管をキッチンの位置までもってくる際、もう一度床をはがさなくてはいけないのはもったいないということに気が付き、入居者さんたちの希望を聞きながらB工事を行うことになったのですが、その調整が大変でした。

ダンノさん:ずいぶんとイレギュラーなことだったのですね。

⎯⎯⎯⎯ ビーフンデザインさんと施工会社さんが柔軟に対応してくださったので、助かりました。この次、同じような企画をするチャンスがあったら、この経験を活かせると思いますが、そんな機会が訪れるかどうか。。。

2026年1月24日・25日に初めての合同マルシェを開催した

⎯⎯⎯⎯ そうして昨年(2025年)10月にようやく完成し、それから2階を借りてくださる金子さん、瀧田さん、小野さんと賃貸借契約を締結し、それぞれがご自身の菓子工房の工事に取り掛かりました。建物ができあがってみて、感想はいかがでしたか?

ダンノさん:皆さんの工事は順調に進んでいきましたが、私のキッチンスタジオは注文していたキッチンの入荷が大幅に遅れるなど順調に進まず、余韻に浸る間もなく今日まで来てしまった感じです。

⎯⎯⎯⎯ そんななかでも、それぞれがオープンするときはご近所への挨拶回りに同行してくださったりして、素敵なオーナーさんだなあと私は感心していました。

ダンノさん:自分のやりたいことに向かって進む3人の入居者さんには、事業を成功させてほしいと思っています。オーナーという言葉はピンときませんが、同じ志をもつ仲間として、皆で協力していくのが理想だと思っています。

合同マルシェではダンノさんのキッチンスタジオで食事やお酒を楽しめる

⎯⎯⎯⎯ キッチンスタジオと菓子工房とで毎月一緒にマルシェを開催することにもされましたね。

ダンノさん:日ごろは皆さん各自で広報をしていますが、合同でマルシェを開催したら、それぞれに新しいお客様に出会える機会が増えます。キッチンにいらしてくださるお客様にとっては2階でお菓子を買えることが楽しみの1つになりますし、逆に2階にいらしたお客様が1階のキッチンに興味を持ってもらえたら、それも嬉しいことです。

⎯⎯⎯⎯ オープニングを記念した最初の合同マルシェでは、農家さんと一緒につくった手作りパセリやトマトを使った調味料の販売会などユニークな企画も実施されていました。

ダンノさん:今後も食に限らずいろいろな企画を考えて、合同マルシェをにぎやかなものにしていきたいと思っています。

初めての合同マルシェでは屋上に特設テントを張って笹木さんが企画展を開催された

⎯⎯⎯⎯ 屋上では笹木さんが企画展を開催してくださっていて、そこに訪れた方たちもお菓子を買い求めてくれていました。

ダンノさん:笹木は年5~6回企画展を開催するつもりだと言っています。これまで企画展にご来場くださった方たちも菓子工房ができるのを楽しみにされていたんですよ。

⎯⎯⎯⎯ 笹木さんは、「アートイベントやマルシェなどの企画を通して四室にいらしてくださったお客様に“楽しい!”や“美味しい!”をたくさん経験していただき、その嬉しさ、楽しさが、ここでお店を始めた皆さんや私たちのやりたいことを広げていく原動力になれば」と前におっしゃっていました。いろんなカタチで入居者さんと協力したいという気持ちが伝わってきて、私は本当に嬉しかったです。

⎯⎯⎯⎯ ダンノさんはほかにも「四室」のInstagramにお店の営業カレンダーを載せたり、営業時間を貼った立て看板を用意されるなど、サポートに努めていらっしゃいます。

ダンノさん:本当は専用サイトをつくったりして、もっと応援してさしあげたいのだけれど、なかなか手が回らないので、まずはできるところから。

⎯⎯⎯⎯ 合同マルシェは開催日を決めて行うのでしょうか?

ダンノさん:今は毎月最終日曜日に開催しようとみんなで話し合っています。

⎯⎯⎯⎯ 菓子工房をひとりきりで運営していたら心細いと思いますが、一緒にマルシェを開けたり、オーナー夫妻が熱心に応援してくださったりと、「四室」を借りておられる方たちはとても恵まれていると思います。私の会社も管理という立場で関わらせていただけることになったので、「四室」の成功のために尽くしていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いします。

ダンノさんと菓子工房の入居者さんたち

文:久保田大介

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久保田 大介

『ワクワク賃貸®』編集長。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月より本ウェブマガジンの発行を開始。 夢はオーナーさん、入居者さん、管理会社のスタッフさんたちがしあわせな気持ちで関わっていけるコンセプト賃貸を日本中にたくさん誕生させていくこと。

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