ご所有物件の「菓子工房」化に関心を持ってくださるオーナーさんを増やしたい
「菓子工房賃貸推進プロジェクト」の連載を開始して約1年半が経ちました。
この間、ご所有物件を「菓子工房」にリノベーションすることに関心を持ってくださるオーナーさんと何人か出会ってきましたが、具体的に話を進めることがなかなかできないでいます。
理由としては主に次のことが挙げられます。
[不動産オーナーが菓子工房へのリノベーションを逡巡する理由]
❶ご相談いただく物件が、「用途地域」的に難しいケースが多い。
❷「菓子工房」にしても借りてくださる方が本当に現れるのか?という不安が拭えない。
最初は借りてくれても、退去されたら次はいないのでは?と心配しておられる。
❸入居者さんが菓子製造販売をビジネスとして継続していけるのか?という疑問がある。
❹改修費用がどれぐらいかかるかわからない。またその費用はどちらがどの程度負担すべきかわからない。
これら不動産オーナーが不安に思っている理由は、菓子工房を増やしていくための課題でもあり、ひとつずつクリアしていく必要があります。
今回は❶~❹のうち、❶・❷・❹をクリアする方法、すなわち不動産オーナーと「菓子工房」空き待ち登録者さんの事前マッチングを考えてみたので、ご披露いたします。
本記事を、菓子工房をつくりたい方だけでなく、たくさんの不動産オーナーが読んでくださることを願っています。
事前マッチングとは?
「ワクワク賃貸」で「菓子工房」に空き待ち登録をしてくださっている方は2024年2月27日時点で149名おられます。
ご登録くださっている方は、つくりたいお菓子や希望するエリアや広さ、家賃などもさまざまです。
これは、見方を変えれば、不動産オーナーが菓子工房にしても良いと思う物件を投げかければ、ピッタリはまる方、あるいは「この条件であれば、足りないところは目をつぶってやってみたい」と思う方も相当数いるということではないかと思っています。
不動産オーナーの中には、「部屋が老朽化し、リノベーションする必要に迫られている」、「所有する物件の今後の競争力に不安がある」という方がたくさんおられると思うので、賃貸経営としての観点から「『菓子工房』にしてみるのも悪くないかも?」と思われましたら、事前に空き待ち登録者さんにリーチしてみてはどうでしょうか?
手順は次の通りです。
[マッチングの手順]
❶「ワクワク賃貸」編集部に、「菓子工房にしてもよい(してみたい)」と思われる物件の「住所」と「間取り」をお知らせください。
※本記事の末尾に連絡用メールのバナーを添付します。
❷編集部で、その物件の用途地域を調べ、間取りが菓子工房にしやすいかどうかを診断して結果を報告します。菓子工房にする場合の概算費用も見積ります。
❸「希望する家賃」と「リノベーションにかけてもよい費用」などを伺い、現実味があるか協議(すり合わせ)します。
❹「利用希望者がいればやってみたい」と思われたら、その物件情報を空き待ち登録者さんたちに伝えます。
❺「借りたい」と立候補くださる空き待ち登録者さんがおられたら、オンライン・ミーティングを設定し、ご面談いただきます。
❻家賃や負担する工事費などで合意することができたら、リノベーションに着手いただきます。プランを詰めていく段階では、利用を決めてくださった方に設備や内装などの意見を伺い、組み込んでいきます。
この手順で進めていけば、不動産オーナーはリノベーションをする前に借りたい方と出会えるので、空室となるリスクを格段に下げることができます(借りたい方が複数いることがわかればなお安心です)。
また、ご自身で負担する工事の範囲や費用も明確になるので、決断しやすくなります。
菓子工房を必要とする空き待ち登録者さんは、不動産オーナーとの出会いの場がつくられることになり、チャンスが拡大します。
貸主・借主双方にとって、メリットが大きいシステムではないでしょうか?
マッチングの成功事例
話が後先になりますが、不動産オーナーと空き待ち登録者さんがマッチングできてつくられた菓子工房がありますので、その事例をご紹介します。
これは「菓子工房賃貸推進プロジェクト」Vol.014でご紹介したことがあるケースで、「ワクワク賃貸」を運営している不動産会社「PM工房社」が管理を委託されている物件での成功事例です。
こちらの物件ではガス給湯器とキッチン・浴室とをつなぐ給湯管が劣化していて、三点ユニットバスと床を解体する必要がありました。
しかし専有面積が20㎡未満なので、元と同じような間取りにした場合、今後も競争力を保っていけるか疑問、しかしバス・トイレ別にするとなると、居住空間がとても狭くなってしまいます。
そこで用途地域が第二種中高層住居専用地域であったことから、一定面積までは住居以外の用途に変更することもできるため、菓子工房にすることを提案しました。
提案にあたり、菓子工房の空き待ち登録者さんたち数人にアプローチしたところ、「是非検討させてほしい!」と言う方がおられたので、オーナーに伝え、菓子工房へのリノベーションを採用してくださいました。
プランを詰めていく段階では、利用者さん(借主さん)に設備や内装の意見を伺い、200Vコンセントを設置したり、キッチンを少し大きめにしたり、落ち着いたカラーにコーディネートしたりなど、ご意見も取り入れさせていただきました。
そして工事完成の目処が立ったところで正式契約し、完成後すぐにご入居いただきました(家賃も発生し始めました)。
その後、保健所の許可もすぐに取得でき、ご商売も順調にスタートしています。
年末(2023年暮れ)にはオーナーさんが、お菓子をネットで購入され、感想をお聞かせくださるなど、貸主・借主の関係も良好です。
マッチングにかかる費用
「ワクワク賃貸」は私の経営するPM工房社という不動産会社で運営しており、このマッチングサービスはPM工房社の事業として取り組ませていただきたいと思っています。
そのためサービス利用料も発生しますが、現時点では次のように設定する考えです。
[マッチングサービスの利用料]
① 上述した「手順」のうち❶~❸までは無償対応させていただきます。
② ❹については1万円(税別)を不動産オーナーから申し受けます。
③ ❺については3万円(税別)を不動産オーナーから申し受けます。
④ ❻まで至った場合は、不動産オーナーからは工事代金(※工事を委託される場合)、プラン作成費、契約事務手数料をいただきますが、それらは❸の段階でお伝えします。
また、空き待ち登録者さんには、工事代金(※ご自身の負担となり、私どもに委託される場合)、仲介手数料(賃料の1ヵ月分/税別)をいただきます。
③の「手順」までは無償で、そこから先へは進まないとすることも問題ありませんので、まずは気楽にご相談いただければと思います。
④から先に進めることを強いることはいたしませんので、ご安心ください。
借りたいと申し出てこられた空き待ち登録者さんが、菓子製造販売というビジネスに向いているかどうか見極めることは手順⑤で行うことができるので、その点でのメリットも大きいと思います(通常は契約前に借主さんと面談することはできません)。
空き待ち登録者さんは、逆に手順⑤でご自身のビジネスプランについて、しっかりとプレゼンしていただく必要がありますが、それは今後の事業を考えるうえで非常に大切なステップにもなると思います。臆せず、進んでいただきたいです。
文:久保田大介