《 ワクワク賃貸妄想中 》Vol.048

憧れのコウハウジング 連載第3回:コウハウジングのコモンハウス

投稿日:2025年9月7日 更新日:

コモンハウスの役割

シェアハウスやコレクティブハウスの大きな特徴として、居住者の個室のほかに、居住者が共用できるリビングやダイニングキッチンがあることが挙げられます。
個室にもキッチンを備えているところがありますが、それでも他の居住者との交流の場となるリビングやダイニングキッチンは欠かせません。
私が憧れているコウハウジングはシェアハウスやコレクティブハウスと違って、ひとつ屋根の下で暮らすのではありませんが、居住者が集まる拠点となる建物が必要です。その建物はコモンハウスと呼ばれています。
コモンハウスには、シェアハウスやコレクティブハウスと同様に共用のリビングがあり、一緒に料理をつくって食事をするダイニングキッチンがあることもあります。
コモンハウスはコウハウジングでの暮らし方や役割分担などについて話し合う場という側面もあるけれど、私はもう少しやわらかく・・・共用のライブラリーやホームシアターとして使えたり、楽器の演奏を楽しめたりして、居住者同士が楽しく同じときを過ごす空間とできたら素敵だなと思います。
しかし、何よりもコモンハウスに期待したいことは、そこに行ったら親しい人たちがいて、思い思いにおしゃべりしたり寛いだりできる場であるということです。
シェアハウスやコレクティブハウスは同じ建物のなかにそうしたコモンスペースがあるので、気が向かなくてもそこに行かなくてはいけないというイメージがありますが、コウハウジングのコモンハウスは、自分の住まいの外にあるので、行きたくないときは行かなくていいという利点があります。その点が私にとっては最も魅力に感じるところです。

学生時代の部室

「かみいけ木賃ネットワーク」2階のリビング

思い起こしてみると、大学時代、私が入っていた映画研究部の部室がまさにそんな感じの場所でした。
私は明治大学文学部で演劇学を専攻していて、将来は演劇や映画など物語づくりに携わる分野のプロデューサーになりたいという憧れを持っていました。
入学してすぐに入部した映画研究部は当時で設立100年超の歴史を持っていて、1・2年次の和泉キャンバス(京王線・井の頭線「明大前」駅にあります)と、3・4年次の駿河台キャンバス(JR中央線・丸ノ内線「御茶ノ水」駅にあります)それぞれに部室がありました。
部室には講義の合間や昼休みなど、時間が空いたときに行っていましたが、そこにいる仲間と他愛もないおしゃべりをしながら時間をつぶしていました。
夜通しのバイト明けで寝ている人もいれば、提出課題の仕上げをしている人もいる。
次の講義が始まるから部室を出ようとしたら、面白い話題が始まってしまって、そのままサボってしまうこともしょっちゅうでした。
もちろん自主映画製作のための打合せの場だとか、8ミリカメラや照明器具などの機材置場という役割もあったけれど、私にとっては、そこに行けば誰かがいておしゃべりできる場という点が何にも替えがたいものだったように思います。
馴染のカフェや居酒屋、バーがその役割を果たしてくれている、という方もたくさんいらっしゃると思いますが、「そこに行けば親しい誰かがいる」というのはしあわせなことですよね。

かみいけ木賃ネットワークはコモンハウスの好事例

「かみいけ木賃ネットワーク」1階の共用スペース

私は「ワクワク賃貸」に掲載する記事を書くために、いろいろな物件を取材させてもらっていますが、「ワクワク賃貸物件集」と「アトリエ賃貸推進プロジェクト」で記事にさせていただいた「かみいけ木賃ネットワーク」には、映研時代の部室と同じ匂いがして、懐かしい気分を味わわせてもらえました。

「かみいけ木賃ネットワーク」を運営しているオーナー夫妻は、風呂なしアパートを所有しておられますが、近くにある元・倉庫兼住居だった古い建物を借りてご自身の住居としてリノベーションされました。その建物の2階にあるリビングや浴室を風呂なしアパートの入居者さんたちが使えるようにしたほか、1階の倉庫部分をシェアアトリエ兼共用スペースとし、その利用者さんたちは2階のリビング等も使うことができます。
リビングにはライブラリーもあって、ワークショップやミニセミナーが開催しておられ、1階の共用スペースでは夜な夜な七輪で焼き肉などをしながら飲んだりしておられて、そのゆるやかな集まりは、とても魅力的でした。
オーナー夫妻はその場所をコモンハウスと定義づけてはおられなかったけれど、私から見たらコウハウジングのコモンハウスの理想像です。
この建物に集まって、思い思いにゆったりとした時間を楽しむ人が増えていく・・・その点は本当に素晴らしいと思います。
私が求めるコウハウジングのコモンハウスとして、「かみいけ木賃ネットワーク」の建物と活動は貴重なお手本となっています。

次回では、いよいよ(ようやく?)私の理想とする、従来とは異なるコウハウジングのスタイルについてお話をしたいと思います。全6回の連載ですので、もうしばらくお付き合いください。

文:久保田大介

イラスト:コミック堂

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久保田 大介

『ワクワク賃貸®』編集長。有限会社PM工房社・代表取締役。 個性的なコンセプトを持った賃貸物件の新築やリノベーションのコンサルティングを柱に事業を展開している。 2018年1月より本ウェブマガジンの発行を開始。 夢はオーナーさん、入居者さん、管理会社のスタッフさんたちがしあわせな気持ちで関わっていけるコンセプト賃貸を日本中にたくさん誕生させていくこと。

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