当ウェブマガジンは「ワクワク楽しいコンセプトを持った賃貸住宅」の紹介を目的に配信している。
「ワクワク賃貸物件集」「入居者インタビュー」「DIY賃貸推進プロジェクト」「アクアハウス・プロジェクト」などのコーナーはその目的にダイレクトに沿ったものだが、少し異質なのが「世界のワクワク住宅」である。
「人が暮らす場所」という共通点はあるけれど「賃貸住宅」ではないので、「おやっ?」と思っている方もいるはずだ。
では何のためにこのコーナーを配信しているかと言うと、その理由はいくつもあるが、一番は「ワクワク楽しいコンセプトを持った賃貸住宅」づくりのヒントを求めたいからだ。
世界中には住宅に関する素晴らしいアイディアの持ち主がたくさんいる。
それらのアイディアを、日本で賃貸住宅をつくるときに役立てることができるのでは?と思い、自分自身の勉強の意味も含めて、情報収集し、記事のかたちで皆様にもご紹介している。
今回のコラムでは、これまで「世界のワクワク住宅」で紹介してきたもののなかで、僕が「是非取り入れてみたい」と思っている「商材」をピックアップしてお伝えしたい。
まずは「秘密の扉」から。
「世界のワクワク住宅」でアメリカにある「秘密の扉をつくる専門会社」=クリエイティヴ・ホーム・エンジニアリング(CHE)社を紹介したが、編集していて自分も本当にワクワクした。
「秘密の扉」がある家は昔から憧れのひとつだったけれど、それを専門に設計・施工する会社があるなんて夢にも思わなかった。
特にトップ画像(組み写真)にある「秘密の扉になっている階段」には本当にビックリさせられた。
これが賃貸住宅の中に組み込まれていたら、話題沸騰間違いなしだ。
問題は、秘密の扉があることを派手にPRできないことか。
秘密が秘密でなくなってしまうから(笑)。
仲介業者さんが案内をしてくださるとき、「ここに秘密の扉があります」などと説明したらやっぱり興醒めだろう。
一案としては「この家のどこかに秘密の扉があります。それは成約したら契約者様だけにお伝えします」と宣伝することだ。
そう言われていても、内見時、仲介業者さんとお客様は、一生懸命、秘密の扉を探されるだろうが・・・。
続いては「シャボン玉ハウス」。
シャボン玉ハウスという名前は僕が勝手にネーミングしたもので、正式な商品名は「バブル」という。
製作しているのはフランスに拠点を置くバブルツリー社で、このシャボン玉のような小さな家は世界中に設置されている(日本にもあるそうだが、まだ情報を入手できていない)。
このシャボン玉ハウスを、たとえば庭に置いたら、建ぺい率・容積率に算入されてしまうのだろうか?
もしされないとしたら、住居系の用途地域である土地に設置すると面白いと思う。
あるいはマンションの屋上に設置してみたい。
「星空を見上げながら眠れる賃貸住宅」などと言って宣伝したら、きっとヒットするだろう。
次に取り上げるのは「屋上を全部使ったプール」。
オーストラリアで創業されたコンパス・プールズ社は、世界32ヵ国でプールを製造している会社だ。
アメリカでは国民の20%が自宅にプールを設けているそうで、「プール製作専門」がビジネスとして立派に成立していること自体にまずは新鮮な驚きを覚えた。
この回で紹介したのは、イングランドで計画中という、ビルの屋上全面をプールにするというプロジェクトだ。2020年から着工するという話で、完成はしばらく先になると思うが(新型コロナウイルスの問題で延期になっていないことを祈るばかり)、日本でもこれがマンションの屋上に設けられたら大変な話題になることは間違いない。
日本の場合、プールでなく露天風呂のほうが人気になるかもしれない。露天風呂ならオールシーズン楽しめるし・・・。
最後にご紹介するのは「ワインセラー」。
「世界のワクワク住宅」ではイングランドにある「ワインセラーをつくる専門会社」=スパイラル・セラーズ社をご紹介した。
日本にもワインセラーがあることをコンセプトにした賃貸住宅は登場しているが、僕が注目したのは上の画像。
「秘密の扉の下にワインセラーが隠されている!」と思ったのだ。
秘密の扉をつくるCHE社と、ワインセラーをつくるスパイラル・セラーズ社がジョイントしたら、さぞかし素晴らしい「秘密のワインセラー」が誕生するだろう。
それが日本の賃貸住宅で採用されたら、どれだけ楽しいことか?と僕は想像し、とてもワクワクした。これ、ホント、実現しないかな?
「世界のワクワク住宅」で紹介されているアイディアは、どれもスケールが大きく、日本の賃貸住宅でそのまま採用するのは難しいかもしれない。
規模を小さくしたとしても、コストもそれなりにかかるから、その分は家賃に上乗せされてしまうので、誰もが気軽に入居できるものにはならないだろう。
ただ、「生涯賃貸派」と言われる人たちが増えている昨今、多少家賃が高くても、それだけの価値は十分にあると思ってくれる人が少しでもいれば、これらのアイディアをベースにした賃貸住宅は登場していく。
テレワークが働き方の主流となっていけば、土地代が安い地域でも賃貸需要は増していくと思うので、建物にコストをかけた楽しい賃貸住宅が生まれていく可能性は十分にある。
それを夢物語だと断じることはできないだろう。
僕はそういう未来の実現に力を注いでいきたいと思う。
執筆:久保田大介