昨年11月、ある読者の方から、「ワクワク賃貸物件集」で紹介した「“炎”のある暮らしが楽しめるコミュニティー型賃貸住宅(ワク賃011)」について、「空いていたら見せてほしい」という投稿をいただきました。
仮にTさんと呼ばせていただきます。
Tさんはこの記事で紹介した「ペレットストーブ」に興味を持たれ、転勤で引っ越すのを機に、ペレットストーブが付いている賃貸住宅を探しておられるとのことでした。
ペレットストーブは木質ペレット(おが粉やかんな屑など製剤副産物を圧縮成型したもの)を燃料とした暖房器具で、薪ストーブと同じく「輻射熱」を利用するため、熱が遠赤外線で伝わり、とても暖かいのが特長です。
上部に鍋を置いて調理することもできるし(※注:一部できない機種もあります)、何より炎のゆらめくさまが見えるのが楽しい。
Tさんがペレットストーブ付きの賃貸住宅に住みたいという気持ちはよくわかります。
しかし、あいにく「ワク賃011」は満室で、空く予定もありません。
そこで物件のオーナーでもある株式会社ミヤケンの宮原一社長に相談したら、現在空室のペレットストーブ付きの部屋を紹介してくれました。
そのことをTさんに報告すると、すでにその物件はチェック済みで、「予算が合わないから見送ったんです・・・」といのこと。
僕のフォローはそこまででしたので、その後Tさんがペレットストーブ付きの賃貸物件に越せたかどうかはわかりません。
転勤まであまり時間がないご様子でしたから、おそらく今回は断念されたんじゃないかと思っています。
さて、Tさんのお手伝いをしていて感じたことですが、自分が住みたいエリア内で、広さ、予算(家賃)もぴったりフィットしたペレットストーブ付き物件に出会えるのはかなり低い確率だと思います。
「ワク賃011」の諸条件はたった今のTさんには合うのだから、この物件が空くのをじっと待つのが一番良いだろうとは思いますが、人気物件ゆえ、いつ空くのかはわからない。
待っているうちに次の転勤時期が来てしまうかもしれません。
ではほかにペレットストーブ付きの賃貸住宅で暮らす策はないのでしょうか?
僕は「ある」と思っています。
どんな策かと言いますと、ペレットストーブを自分で買って、設置代も出すからつけさせてもらえないか?と大家さんに交渉するという方法です。
先述したミヤケンさんはペレットストーブの製造販売会社・株式会社さいかい産業の販売代理店もされているので、設置にいくらかかるか訊ねたら、本体購入代金・設置工事代など合計で約35万円程度からあるということでした。
35万円が高いか安いかは人それぞれ判断が異なるでしょうが、自分にとってはその価値が十分あると思い、その負担を覚悟できるのであれば、大家さんと交渉してみることを勧めたいです。
今、住んでいる家でダメだったら、仲介店舗に行き、「ペレットストーブの設置を認めてくれる家を探している」と相談すると、良心的な営業マンなら大家さんや管理会社と交渉してくれるはずです。
ただし、営業マンはそもそもペレットストーブが何であるかということから知らない可能性が高いので、その説明はもちろん必要です。
ほかにも設置の仕方、メンテナンス方法、退去時の原状回復などを理解していただく必要があります。
それらを口頭で伝えようとしても難しく、営業マンが次に大家さんに説明することを考えると、説明資料を自分で作成し、それを渡しておくのがよいでしょう。
先述したさいかい産業のホームページには商品のことだけでなく、設置やメンテナンスの方法などを非常にわかりやすく説明してくださっているので(メンテナンス方法は動画で解説されている!)、それを見れば、比較的楽に作成できるはずです。
大家さんが気にするポイントを予想し、その答えも書いておくといいように思います。
気にするポイントは、
1)火事の心配はないか?
2)設置の方法は?
3)建物にダメージはないか?
4)近隣に迷惑はかけないか?
5)原状回復工事はどうするか?
などではないでしょうか。
この4点について、ミヤケンさんに質問してみました。
その結果を僕の感想も交え、簡単に紹介しておきます。
1)火事の心配はないか?
ペレットストーブの設置については、販売代理店に依頼し、設置場所として最適な場所を調査していただき、慎重に工事を進めてもらうようにしてください。
DIYでやってしまうようなことは絶対に避けてください。
専門家にきちんと設置してもらい、排気口の周りに燃えそうなものを置かず、本体と壁との距離をしっかり確保し、定期的にメンテナンスを行えば、心配はほぼないようです。
ガスファンヒーター、石油ストーブなどと同じような心配レベルだと感じました。
2)設置の方法は?
こまかな説明は省きますが、基本的には壁にスリーブ穴を開け、排気用の煙突を設置するだけですので、エアコンを取り付けるのとさほど変わらないように思います。
下の画像が「ワク賃011」の排気用煙突ですが、とてもコンパクトです。
ただし、既定の離隔距離等、設置に必要な条件はエアコンより厳しくなるので、希望通り設置できない可能性はエアコン以上にあります。
この点も販売代理店に事前相談しておくとよいですね。
3)建物にダメージはないか?
上記2)でご説明しましたが、壁にスリーブ穴を開けることになるので、この点は大家さん、管理会社にきちんと理解していただく必要があります。
また、外壁の素材にもよりますが、煙の煤(すす)は付着するものと考えておくべきで、この点もよく説明しておくべきだと思います。
4)近隣に迷惑はかけないか?
ペレットストーブは着火時に若干の煙が出ますが、しっかり火が入り稼働し始めるとほとんど出ません。臭いは排気口付近ではしますが、離れると木の燃えた臭いがほんのり漂ってるな、と感じる程度になります。
しかし気になる方もいると思いますので、隣家の方にはご挨拶し、よく説明しておくようにしてください。
せっかく自費でつけたのに、クレームが入って撤去しなければならなくなったらもったいないですから。
5)原状回復工事はどうするか?
原状回復工事は3)と関連しますが、スリーブ穴をパテ等でふさぐことと、煤をクリーニングすることが挙げられます。
壁を完全に元通りにするのは不可能なので、それを大家さんが求めるのであれば、最初からあきらめて、ほかの物件を探したほうがいいです。
一方で、設置したペレットストーブを大家さんや管理会社が見て、「これはいい!」と気に入られ、そのまま残していってもいいと言ってくれる可能性もあります。
交渉次第では本体を買い取ってくれることもあるかもしれません(過度に期待はしないでください)。
今回、僕が読者の皆様に何を伝えたいかというと、「賃貸だからといって、あきらめる必要はない」ということです。
ペレットストーブがすごく気に入り、どうしてもペレットストーブを使って暮らしたいのであれば、もともとついている物件を探す一方で、自分自身で設置することも考えてみてください。
大家さんとの交渉が成功する確率はそう低いものでもないと思います。
そうやって自分の力で獲得できた賃貸ライフは、いっそうワクワク楽しいものになるはずです。
一方で、大家さんや管理会社と交渉すること、自分で費用を出すことに二の足を踏まれる方は、このウェブマガジンの「お問合せ」ページを利用して「空き待ち」登録をしてください。
空いたらご連絡することはもちろんのこと、「空き待ち」が多ければ、こちらで大家さんと交渉し、ペレットストーブ付きの物件を新築、リノベーションしてもらうこともあります。
また今回、ペレットストーブについて詳しく教えてくださったミヤケンさんは「ミドリムシ不動産」というサイトを運営しておられ、ここには何と「ペレットストーブ付き」という検索項目もあります。このサイトのチェックも欠かせません。
いずれにしても、能動的な行動は必要です。
欲しいものは待っていてもなかなか手に入らない。
「欲しけりゃ自分で動いてつかみとる!」という姿勢が必要なときもあるのだと思います。
執筆:久保田大介
イラスト:コミック堂